女性特有の悩みをもっていませんか? 第1回 女性ホルモンと上手に付き合う方法
SUMMARY
- ・月のリズムをつくる“ふたつの女性ホルモン”
- ・不調の時期の過ごし方…どうすればいい?
- ・“がまんしすぎない”ことも重要
- ・まとめ
月のリズムや気温差、環境の変化などによって影響を受けやすいといわれている女性の体。皆さんも「頭が痛い」「だるい」「気分が晴れない」といった不調を感じることはありませんか?
そこで女性の体にまつわる悩みをテーマに、原因や解決法などを多摩センターレディースクリニック院長の清水華子先生にお話を伺い、全3回のシリーズでお届けします。
第1回目は「女性ホルモン」がテーマです。
月のリズムをつくる“ふたつの女性ホルモン”
「女性ホルモンには“エストロゲン(卵胞ホルモン)”と“プロゲステロン(黄体ホルモン)”があり、女性の体はと心は、このふたつのホルモンの分泌バランスによって大きく左右されています」と清水先生。
「エストロゲンは女性らしい体を保ったり、メンタルを安定させる通称“美のホルモン”。自律神経を安定させる作用のほか、コラーゲンの産生を促すことで肌をきれいにし、髪に艶を与える働きも。女性の健康と美を司ってくれるホルモンなんです」
そのエストロゲンは、生理の開始と共に徐々に分泌量が増え、排卵後に徐々に分泌量が減っていきます。
「一方、プロゲステロンは、妊娠に欠かせない役割をもつホルモン。ですが、水分などをため込んだり皮脂分泌を促す作用があり、むくみや便秘といった不調や、肌トラブルを招くことも。また精神面にも影響を与え、イライラしたり落ち込みやすくなります」
プロゲステロンは排卵後に徐々に増え始め、生理前に向かって分泌量が減っていきます。生理前に不調を感じる人が多いのは、このプロゲステロンの影響を受けているからなのです。
「このように月のリズムによって不調を感じたり、また生理中は生理痛に悩まされるなど、女性の体はとてもデリケート。さらにこのふたつの女性ホルモンは、環境やストレス、乱れた食生活などによってバランスがくずれたり、分泌量が変わったりしがちです。それによってだるさや痛み、鬱々として気分などの不調がさらに強く出ることもあります」
不調の時期の過ごし方…どうすればいい?
女性ホルモンのリズムとうまく付き合っていくには、不調時の過ごし方が鍵となってきます。
「黄体期(排卵から生理前、プロプロゲステロンが優位のとき)は、体の循環が滞って、自律神経も乱れがちです。まずは規則正しい生活を送りましょう。湯船にもじっくり使って体のめぐりを整えてください。睡眠をしっかりとることも重要です」
そしてしっかりと行いたいのが、スキンケア。
「いつもより皮脂が出て、毛穴が詰まりやすくなっています。肌を清潔に保つよう、洗顔をきちんと行いましょう。ただ皮脂が出る一方で、肌の内側は乾燥しやすくもなっています。洗顔後はきちんと保湿をすることが大切です」
また食事にもポイントがあります。「皮脂が出やすい時期なので、揚げ物などの脂質は控えたバランスのよい食事を心がけましょう。健康と美容のコンディションを整えるビタミンCをとることもおすすめします」
“がまんしすぎない”ことも重要
「不調の出方は人それぞれです。あまりにもつらかったり、痛み止めを飲んでも生理痛が収まらないようでしたら、早めに病院を訪れることをおすすめします。場合によってはピルによって症状を弱めることも可能ですよ」と清水先生。
ピルはふたつの女性ホルモンを含む経口避妊薬で、女性ホルモンの分泌の増減を抑えて、一定量を保つ働きをします。生理後のエストロゲンの“山”と排卵後のプロゲステロンの“山”がなくなり、分泌量がどちらもフラットになることで、卵胞が発育せず、卵巣が排卵しなくなるというしくみです。
「排卵が止まるので避妊のための薬と思われがちですが、生理痛やPMS(月経前症候群)の緩和、そしてホルモンバランスを整える作用もあります。ホルモンバランスは20歳前後で安定する人が多いので、生理痛や生理不順に悩まされる中高生に処方することも多いんですよ。また大人になって子宮にトラブルを抱える方にもおすすめです」
気になるのが、ピルとサプリメントの併用です。体に影響はないのでしょうか。
「クリニックでもよく聞かれる質問ですが、問題ないと思います。
不調や痛みに耐えるストレスなどでも体内に必要な栄養素は消費されがちですから、積極的に補ってあげたほうが、むしろよいでしょう。」
まとめ
近年、フェムテックの機運が高まったことで、女性特有の悩みも相談しやすい社会になってきました。とはいえ、あまりにも個人的な悩みすぎて、躊躇してしまう方もまだ多くいらっしゃるかもしれません。
清水先生がおっしゃっていたように悩みが大きいほど、専門家に頼るのが手。
聞くのがためらわれる素朴な疑問も、専門家にしてみたら当たり前のことのような安心感を覚えました。
自分のカラダと向き合うことは、ストレスの多い現代社会で活躍する女性にとって、欠かせない習慣となるでしょう。
清水華子先生
多摩センターレディースクリニック院長。産婦人科専門医・指導医、がん治療認定医、婦人科腫瘍専門医。年齢はもちろんのこと、個人によって多岐に渡る女性の悩みに真摯に向き合い、より多くの女性が快適な毎日を送るための診断、治療に励んでいる。